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仙台地方裁判所 昭和32年(行)18号 判決

仙台市八軒小路二三番地

原告

菅井保十郎

右訴訟代理人弁護士

神谷春雄

仙台市北一番丁一一七番地

被告

仙台国税局長 高柳忠夫

指定代理人 朝山崇

清水忠雄

小野義男

守木英男

伊藤洋逸

右当事者間の所得税再審査決定取消等請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

一、原告の請求を棄却する。

一、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は、「(一)仙台北税務署長が原告に対して昭和三一年三月三一日付でした昭和三〇年分の所得税および無申告加算税の賦課決定を取り消す。(二)右賦課決定に対する原告の審査請求につき、被告が昭和三二年一一月五日付でした審査決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、請求原因として、

一、仙台北税務署長は昭和三一年三月三一日原告に対し、原告の昭和三〇年分の総所得金額を金一〇〇万円と認定した上、同年度の所得税として金三三六、一二〇円、無申告加算税として金三三、六〇〇円を賦課する旨の決定をした。原告はこれに対し同年四月二日同税務署長に対し再調査の請求を行い、同税務署長は同年九月三〇日棄却の決定をした。そこで原告は被告に対して同年一〇月一〇日審査の請求をしたところ、被告は昭和三二年一一月五日右審査請求を棄却する旨の決定をした。

二  原告は金融業者であるところ、昭和二九年八月一八日休業し、同三一年七月一一日廃業したものであつて、原告の昭和三〇年分の所得は後記のように僅か金一七六、九一〇円に過ぎないのであるから、原告は所得税法による所得税を納付すべき義務および確定申告をすべき義務を有しない。よつて前記北税務署長の賦課決定および右決定を支持して原告の審査請求を棄却した被告の前記決定はいずれも理由がないから、その取消を求める。

と述べ、被告の主張に対し、「原告が被告主張のように確定申告をしなかつたことは認める。その余の事実は否認する。別紙一に対する認否は別紙三記載のとおりである。なお、原告はさきに別紙一14欄記載(鎌田茂関係)の取引事実および同3欄記載(石垣正太郎関係)の利率を認めたが、右はいずれも事実に反し、かつ錯誤に基くものであるから、右自白を撤回し、右の部分の認否を別紙三記載のとおり改める。」と述べた。

被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め請求原因に対する答弁として、「第一項は認める。第二項のうち、原告が当時金融業者であつたことは認めるが、その余の事実は否認する。」と述べ、「原告の昭和三〇年分の金融業およびこれに附随する業務による事業所得は、別紙一記載のように金一、五四〇、八一四円であつた。それにもかかわらず原告は所得税法第二六条第一項による確定申告をしなかつたので、仙台北税務署長は別紙二記載の計算に基き、原告主張のような賦課決定をした。なお、原告の自白の撤回には異議がある。」と述べた。

立証として、原告は甲第一ないし三三号証を提出し、証人菅原耕三、佐藤小太郎、山口長太郎、吉川福三、門田荘平、五十嵐金治、萩原長一、大野達夫、佐藤くに、桜井勇治の各証言および原告本人尋問の結果を援用し、乙第一五号証の二ないし四の成立および原本の存在を否認する、乙第三六号証の二の成立は知らない、その余の乙号証の成立を認めると述べ、被告は、乙第一ないし八号証、九号証の一、二、一〇ないし一四号証、一五号証の一ないし四、一六ないし一九号証、二〇号証の一、二、二一ないし三〇号証、三一号証の一、二、三二ないし三五号証、三六号証の一、二を提出し、証人高橋勝雄の証言を援用し、甲第四号証、一七ないし二三号証、二七ないし三三号証の成立は知らない、その余の甲号証の成立を認めると述べた。

理由

一、仙台北税務署長が昭和三一年三月三一日原告に対し、原告の昭和三〇年分の総所得金額を金一〇〇万円と認定した上、同年度の所得税として金三三六、一二〇円、無申告加算税として金三三、六〇〇円を賦課する旨の決定をしたこと、原告が昭和三一年四月二日同税務署長に対し再調査の請求を行い、同税務署長が同年九月三〇日棄却の決定をしたこと、これに対し原告が被告に同年一〇月一〇日審査の請求をしたところ、被告が昭和三二年一一月五日右審査請求を棄却する旨の決定をしたこと、原告が昭和三〇年中金融業者であつたことは、いずれも当事者間に争いがない。

二、そこで原告の昭和三〇年中における所得の額について考えてみる。なお以下「収入すべき金額」とは、昭和三〇年中において原告が当事者間の契約、調停、判決等により法律上収得すべく確定した金員(現実の支払の有無には関係がない。)および確定した金員をこえて現実に収得した金員をいうものである。

(一)  (佐藤小太郎関係)

成立に争いのない甲第七号証、乙第一五号証の一、第二〇号証の一によれば、原告が佐藤小太郎に対し昭和二七、八年頃貸し付けた金員の残元利金の支払について、昭和二九年七月五日仙台簡易裁判所において原告が佐藤小太郎外二名から金二一五、〇〇〇円の分割支払(三回分以上遅滞したときは期限の利益を失い、残額およびこれに対する日歩金三〇銭の割合による遅延損害金を支払う旨の過怠約款がつけられた。)を受ける旨の調停が成立したところ、その後佐藤が割賦弁済を遅滞したため期限の利益を失い、昭和三〇年一月一日現在残元金一三五、〇〇〇円およびこれに対する日歩三〇銭の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負つていたこと、そして原告は、昭和三〇年中に別紙注1記載のとおり遅延損害金として合計金一二五、五八〇円の支払を受けたことを認めることができ、甲第三二号証は右認定の妨げとならず、右認定に反する原告本人尋問の結果は信用せず、他に右認定を左右する証拠はない。従つて原告の昭和三〇年中において収入すべき金額は金一二五、五八〇円となる。

(二)  (門田荘平関係)

成立に争いのない甲第一六号証、乙第一、一六、二八号証、乙第三六号証の一、証人門田荘平の証言(一部)およびこれによつて真正に成立したものと認められる甲第一七、二〇号証によると、(い)原告は門田荘平に対し、昭和二六年九月三日金五万円を、遅延損害金は日歩四〇銭(以上は当事者間に争いがない)弁済期日同年一〇月三一日という約束で貸しつけたが、右弁済期日までに弁済がないため、門田は原告に対し日歩四〇銭の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負つたこと、昭和三〇年八月以降右当事者間で右遅延損害金を一箇月金三、〇〇〇円に減額する旨の約束ができたこと、従つて原告の昭和三〇年における遅延損害金として収入すべき金額は、同年一月から七月まで日歩四〇銭の割合による二一二日分計金四二、四〇〇円、八月から一二月まで一箇月金三、〇〇〇円の割合による五箇月分計金一五、〇〇〇円、合計金五七、四〇〇円であること、(ろ)昭和二九年一二月二〇日原告は門田に対し金一二万円を貸しつけ、その譲渡担保とする趣旨で門田所有にかかる別紙四の甲、乙建物を原告の所有名義に移し、同時にこれを同年一二月三〇日賃料一箇月金一一、〇〇〇円(これは実質上右貸金の利息に相当する。)、毎月末日支払の約束で賃貸する形式をとつたこと、昭和三〇年八月八日仙台簡易裁判所において右当事者間に調停が成立し、右賃貸借を合意解約した上、甲建物については区画整理完了と同時に明け渡すこととし、明渡すみまで毎月金三、〇〇〇円を支払う、乙建物については同日直ちに明け渡すこと、昭和三〇年一月から七月までの賃料合計金八四、〇〇〇円のうち、原告において金一四、〇〇〇円を免除し、その余の金七万円は甲建物の明渡の際門田が原告に支払うべき旨(この約束は金七万円について、甲第八号証中の条項第三項による区画整理完了という不確定期限までその支払を猶予したことを意味するから、もし昭和三〇年中に区画整理が完了しないときは右金員は原告において同年度中に収入すべき金額ではない。)を約したこと、しかるに門田は昭和三〇年中には区画整理が完了しないため甲建物の明渡をしなかつたこと、他方門田は昭和三〇年中に乙建物についても明渡をしないので、原告は同人から同年八月から一二月までの間甲、乙建物の賃料相当の損害金として一箇月金八、〇〇〇円(これは前同様実質上利息である)合計金四万円を受領したことを各認めることができ、証人門田荘平の証言および原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は信用しない。従つて、同年度における原告の収入すべき金額は合計金九七、四〇〇円となる。

(三)  (石垣正太郎関係)

原告が石垣正太郎に対し、昭和三〇年四月八日金二〇万円を貸しつけたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第二号証によれば、同人は原告に対し同年八月二二日に元利金を弁済したことが認められる。そして利率に関する原告の自白の撤回については、この点についての原告本人尋問の結果が乙第二号証に対比して措信しがたく、他に右自白が真実に反することの証明のない以上、その効力がないから右利率は月六分ということになる。次に原告が延滞料として金一、〇〇〇円を受領した旨の被告の主張は、これを認めるに足りる証拠はない。従つて原告の収入すべき金額は合計金五三、六〇〇円となるが、被告の主張によると原告は同人に対し右金員のうち金二、〇〇〇円を免除したというのであるから、結局原告の収入金額は金五一、六〇〇円となる。

(四)  (萩原長一関係)

原告が萩原長一に対し別紙一(1)欄記載の日に同(2)欄記載の金額合計金三〇万円をいずれも利息月五分の約束で貸しつけたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第三号証および証人萩原長一の証言によると、昭和三〇年中には未だ元金の支払は全然なされず、従つて原告は萩原長一に対し右割合による利息又は損害金合計金一八万円の支払を求める権利を有していたことが認められ、右認定に反する証拠はないから、同年度において原告が収入すべき金額は金一八万円である。

(五)  (大野達夫関係)

成立に争いのない乙第四号証、第二九号証(一部)第三〇号証、証人大野達夫の証言によると、原告は大野達夫に対し昭和二九年八月下旬頃金五万円を利息月一割(同年一〇月以降月九分に改めた。)、弁済期同年一〇月二六日という約束で貸しつけたこと、同人は昭和三〇年中には右元金を返済せず、従つて原告は同人に対し月九分の割合による遅延損害金合計金五四、〇〇〇円の支払を求める権利を有していたこと(同年中にその大部分の支払を受けた。)が認められ、右認定を左右する証拠はない(なお、乙第二九号証の公正証書とは別に利率に関する前記のような約束のあることが認められる以上、同証書記載の利率をそのまま右契約の利率と認めるわけにはいかない。以下同様である。)から、同年度における原告の収入すべき金額は金五四、〇〇〇円である。

(六)  (早坂盛関係)

昭和三〇年度における原告の収入金額が金七九、二〇〇円であることは当事者間に争いがない。

(七)  (吉川福三関係)

原告が吉川福三に対し、(い)昭和二八年六月一五日金六万円、(ろ)同年七月三〇日金二万円をそれぞれ貸し付け、その利率が月一割であつたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第一七号証によると、右元金は昭和三〇年中には未だ弁済されなかつたことが認められるから、特段の反証のない本件においては、原告が同年度中に収入すべき金額は金九六、〇〇〇円(右証拠によると、同年中に金二二、〇〇〇円につき現実に支払を受けた。)である。

(八)  (菅原耕三関係)

原告が菅原耕三に対し、昭和二九年一二月二九日金一二万円を貸しつけたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第二一号証、第三一号証の一、二によれば、右金員の弁済期は昭和三〇年四月二八日であり、利息は年一割八分、遅延損害金は同年八月三一日までは年三割六分の割合となつていたこと同年一一月二一日原告は元金のうち八九、五一四円の弁済を受け、残元金は三〇、四八六円となつたことを認めることができる。そうすると、原告は同年度中において同年四月二八日までの利息として金七、〇四二円、同日以降同年一一月二一日までの損害金として金二四、五〇〇円同日以降同年一二月三一日までの損害金として金一、二〇三円合計三二、七四五円が原告の収入すべき金額となる。

(九)  (前田哲二関係)

原告が前田哲二に対し、(い)昭和二七年四月二四日金五万円、(ろ)昭和二八年八月二四日金四六、〇〇〇円をいずれも利息日歩二〇銭の約束で貸し付けたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一一号証によると、昭和二九年一二月二二日仙台簡易裁判所において、右貸付金利息等の弁済について前田哲二外一名が原告に対し、(イ)昭和二九年一二月三一日限り金二五、六〇〇円、(ロ)昭和三〇年一月三一日限り金二五、六〇〇円(これは調停条項の全趣旨からみると貸付金に対する調停成立の日までの利息に相当すると認められる。)、(ハ)昭和三〇年二月から一六ケ月間毎月末日限り各金六、〇〇〇円(これは右貸付金の元本に相当すると認められる。)およびこれに対する昭和三〇年一月一日からそれぞれ年四割の割合による損害金を支払う、(ニ)もし右分割払いを二回以上怠つたときは、期限の利益を失い残額とこれに対する遅滞におちいつた日から日歩二〇銭の割合による金員を支払うという調停が成立したことが認められる。そして本件においては、前田哲二らについて前記(ニ)に該当する事実が発生したのかどうか、もし遅滞におちいつたとしてもその時期はいつかについてこれを明らかにする資料はない(甲第四号証中前田哲二関係昭和三〇年分支払内訳は合計額とくい違つていて資料とはなしがたい。)。従つて、原告の昭和三〇年度における収入すべき金額は前記(ロ)の金二五、六〇〇円および(ハ)の損害金一五、五三七円の合計金四一、一三七円ということになる。

(一〇)  (真野小一郎関係)

昭和二九年七月七日原告が真野小一郎に対し、金四万円を貸しつけたことは当事者間に争いがなく、原告本人尋問の結果およびこれによつて成立を認めうる甲第四号証、第二一号証によれば、弁済期は同年九月五日、遅延損害金が月五分の約束であつたこと、昭和二九年中には右元本の弁済のなかつたことが認められる。以上の事実によれば昭和三〇年における原告の収入すべき金額は金二四、〇〇〇円である。

(一一)  (阿部兵衛関係)

原告が阿部兵衛に対して昭和二七年一〇月三一日金一二万円を利率日歩四〇銭という約束で貸しつけたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一二号証、乙第二二号証によると右契約の弁済期は昭和二八年一月二八日であること、昭和三〇年末日現在右元本一二万円は全然弁済されていなかつたことが認められる。右事実によると、原告が昭和三〇年中に遅延損害金として収入すべき金額は金一七五、二〇〇円となる。

(一二)  (尾崎喜保関係)

原告が昭和三〇年七月二五日尾崎喜保(外一名)に対して金一五万円を利息日歩一六銭、遅延損害金日歩二〇銭という約束で貸し付けたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第八、一九、三二、三三号証によれば、右契約の弁済期が昭和三〇年一〇月二二日であること、昭和三〇年中には右元金の弁済はなされなかつたことを認めることができ、以上の事実によれば、原告の昭和三〇年中における収入すべき金額は、被告主張のとおり合計金四二、六〇〇円となる。

(一三)  (青木徳孝関係)

原告が昭和二七年一二月二九日青木徳孝に対し金五万円を貸しつけたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一三号証によると、弁済期は昭和二八年二月二七日、遅延損害金月一割二分の割合であつたこと、昭和三〇年一、二月中には元本の支払はなかつたこと、右遅延利息は昭和二九年二月末日まで支払われたこと、昭和三〇年一一月一〇日原告と連帯債務者伊勢久との間に仙台簡易裁判所において和解が成立し、同人は原告に対し、昭和三〇年一一月三〇日までに元金五万円および利子として金二、〇〇〇円を支払う旨を約したことが認められる。右事実によると、原告の昭和三〇年中における収入すべき金額は遅延損害金として収入すべき昭和三〇年一、二月分計一二、〇〇〇円、調停利子二、〇〇〇円合計金一四、〇〇〇円となる(なお、乙第一〇号証に添付された「青木徳孝本人の帳簿の写」なる書面は、作成者および作成のいきさつが明らかでなく、その内容も極めて信用性に乏しい。)。

(一四)  (鎌田茂関係)

成立に争いのない乙第二三号証によれば、原告は昭和二八年九月八日松島鉱業株式会社外三名に対し、金五万円を弁済期昭和二八年一一月六日、遅延損害金月一割二分の約束で貸し付けたことを認めることができる。従つてこの点に関する自白の撤回は効力がない。けれども昭和三〇年一月一日以降において右元金の支払義務が存したこと、すなわち遅延損害金として原告において収入すべき金額のあつたことを認めるに足りる証拠はない(かえつて原告本人尋問の結果によれば、元利金はその当時既に弁済ずみではないかと思われるふしがある。)。

(一五)  (猿沢栄一関係)

原告が昭和二九年一〇月二〇日猿沢栄一に対し金四四、〇〇〇円を貸し付け、昭和三〇年中における遅延損害金の割合が別紙注4記載のとおりであることは当事者間に争いがなく、右事実によれば同年中における原告の収入すべき金額は注4記載のとおり合計金四、三四〇円となる。

(一六)  (山田清蔵関係)

成立に争いのない甲第二四ないし二五号証、証人桜井勇治の証言、原告本人尋問の結果によると、昭和二五年三月一七日申立人山田清蔵外三名と相手方原告との間において、右当事者間のこれまでの貸借関係を精算した上、残金四三二、〇〇〇円(元本)を山田外三名は原告に対し昭和二五年四月から昭和二八年三月まで毎月末日限り金一二、〇〇〇円ずつ分割して支払う、右分割払を二回以上延滞したときは期限の利益を失い残額につき日歩二〇銭の割合による損害金を付して支払う旨の調停が成立したこと、ところが申立人らは昭和三〇年一二月三一日現在において未だ右元本の支払がなかつたことを各認めることができ、右事実によれば原告の昭和三〇年において損害金として収入すべき金額は合計金三一五、三六〇円となる。

(一七)  (今野正法関係)

原告が今野正法に対して、(い)昭和二九年一月五日金六万円を利率日歩四〇銭で、(ろ)昭和三〇年四月一九日金一五万円を同年六月一七日までは利率月一分五厘、同年六月一八日から同年一二月末日までは利率日歩九銭八厘の約束で貸しつけたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第一二号証、原告本人尋問の結果によると、昭和三〇年一二月末日現在において未だ右元本の支払がなかつたことが認められる。以上の事実によると、原告の昭和三〇年における収入すべき金額は(い)につき金八七、六〇〇円、(ろ)につき金三三、四五九円合計金一二一、〇五九円となる。

(一八)  (佐藤利保関係)

成立に争いのない甲第一五号証によると、原告は昭和二八年一二月三日佐藤利保に対して貸しつけた金八万円の弁済につき昭和二九年九月三〇日仙台簡易裁判所において右当事者間に調停が成立し、佐藤は原告に対し、金八万円およびこれに対する昭和二九年五月一日から日歩一五銭の割合による遅延損害金の支払義務のあることを認め、(イ)昭和二九年一一月末日限り、同年五月一日から同年一〇月末日までの右元金八万円に対する損害金二一、六〇〇円、(ロ)昭和二九年一二月末日限り、右元金八万円のうち、金二万円と右元金八万円に対する同年一一月一日から同年一二月末日まで日歩一五銭の割合による損害金、(ハ)昭和三〇年一月末日限り、右残元金六万円のうち、金二万円と右残元金六万円に対する同年一月一日から同年一月末日まで日歩一五銭の割合による損害金、(ニ)昭和三〇年二月末日限り、右残元金四万円のうち金二万円と右残元金四万円に対する同年二月一日から同年二月末日まで日歩一五銭の割合による損害金、(ホ)昭和三〇年三月末日限り、右残元金二万円とこれに対する同年三月一日から同年三月末日まで日歩一五銭の割合による損害金をそれぞれ支払うことを約したこと、右分割支払については特に過怠約款をもうけなかつたことが認められる。右事実によると、(イ)につき損害金二一、六〇〇円、(ロ)につき元金二万円、損害金七、三二〇円、(ハ)につき元金二万円損害金七、三二〇円、(ニ)につき元金二万円損害金一、六八〇円、(ホ)につき元金二万円損害金九三〇円、以上合計金一一三、三二〇円となるところ、証人佐藤くにの証言およびこれよつて成立を認めうる乙第一三号証によると、右調停成立後昭和三〇年末日まで原告が佐藤利保から受領した金員は金六六、五〇〇円であつて前記合計金をこえないものであることが認められ、他に昭和三〇年末日以前に右調停条項を合意の上変更し、或は過怠約款を附加したりしたことを認めるに足りる証拠はない(甲第二七、二八号証をもつてしても、昭和三〇年中に右変更附加をなしたものと認定することはできない。)から、原告の昭和三〇年中において損害金として収入すべき金額は(ハ)、(ニ)、(ホ)の合計金五、四〇〇円ということになる。

(一九)  (堀籠保夫関係)

原告が堀籠保夫に対して昭和二九年三月金一〇〇万円を利率年六分で貸しつけたことは当事者間に争いがない。けれども弁済期はいつか、現実にいつ弁済されたのかについてこれを認めるに足りる何らの証拠もない以上、原告の昭和三〇年における収入すべき金額は全く不明である。

(二〇)  (新保兵吉関係)

原告が新保兵吉に対して昭和二七年一二月二六日金三万円を利率月五分の約束で貸しつけたことは当事者間に争いがなく、原告本人尋問の結果およびこれによつて成立を認めうる甲第二九、三〇号証によれば、昭和三〇年末日までには末だ右元金の弁済のないことが認められるから、原告の昭和三〇年中における収入すべき金額は金一八、〇〇〇円となる。

(二一)  (五十嵐金治関係)

原告が五十嵐金治に対し昭和二六年六月四日金二五、〇〇〇円を貸しつけたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第二四号証、証人五十嵐金治の証言原告本人尋問の結果によると、弁済期は昭和二六年八月三日、遅延損害金は日歩四〇銭であること、昭和三〇年一二月末日現在右元金は未だ弁済されていないことが認められ、以上の事実によると昭和三〇年中における原告の収入すべき金額は、金三六、五〇〇円となる。

(二二)  (及森三郎関係)

原告が及森三郎に対し、(い)昭和二七年六月一日金三万円、(ろ)同年七月七日金二万円、(は)同年九月六日金二万円をそれぞれ貸しつけたことは当事者間に争いがなく、原告本人尋問の結果およびこれによつて成立を認めうる甲第三三号証によると、弁済期は(い)につき同年七月三〇日、(ろ)につき同年九月四日、(は)につき同年一一月四日であり、遅延損害金はいずれも日歩四〇銭であつたこと、昭和三〇年一二月末日現在右元金はいずれも未だ弁済されていないことを各認めることができる。右事実によると、原告の昭和三〇年中における収入すべき金額は金一〇二、二〇〇円となる。

(二三)  (山口長太郎関係)

原告が山口長太郎に対し、昭和二七年七月四日金二五、〇〇〇円を利率日歩四〇銭(後記乙第二六号証によるとこれは遅延損害金と認められる。)の約束で貸しつけたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第二六号証によると、弁済期は同年九月二日であること、山口は原告に対し、昭和二七年七月四日に弁済期までの利息を前払いし、右弁済期に金六、〇〇〇円(これによつて元本は金一九、〇〇〇円となつた。)同年一〇月三〇日に金六、〇〇〇円(このうち金四、四一八円は右残元本に対する同日までの五八日間の遅延損害金に充当され、残り金五八二円は元本の支払に充当されるから残元本は金一八、四一八円となつた。)を支払つたこと(その後若干の遅延損害金が支払われているが、昭和三〇年中元本金一八、四一八円に対する弁済はない。)が認められるから、原告の昭和三〇年における収入すべき金額は、金二六、五四五円となる。

三、以上の事実によると、原告の昭和三〇年における金融業による利息、損害金等の収入すべき金額は、合計金一、六四二、八六六円となり、これに被告主張の所得率七五%(証人高橋勝雄の証言によると、原告は昭和三〇年の所得に関する税務官吏の調査の際、収支を明らかにする資料を提出しなかつたことが認められる。又被告が本件について適用した所得率は一応合理的な推計と認められる。)を乗ずれば、原告の昭和三〇年における事業所得は金一、二三三、三四九円となり、これは仙台北税務署長の認定した同年における原告の所得金一〇〇万円を下らないものである。そして右所得金一〇〇万円について課せられる所得税額は別紙二記載の計算のとおり金三三六、一二〇円であり、又原告が昭和三〇年所得について確定申告をしなかつたことは当事者間に争いがないから、原告の納付すべき無申告加算税は金三三、六〇〇円となる。従つて、仙台北税務署長のなした請求の趣旨第一項の決定および被告のなした同第二項の決定には原告主張のような違法のないことが明らかである。

四、以上の次第で、右決定の取消を求める原告の本訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 佐々木泉)

別紙一

菅井保十郎昭和三〇年分収入金額内訳表

〈省略〉

説明 (一) 原告は、収支を明らかにするに足りる記録および資料を提出しなかつたので、仙台国税局制定の商工庶業所得標準率を参酌して原告の所得率を七五%として計算したものである。

(二) 門田荘平関係の収入金額は昭和二九年一二月二〇日原告が同人に対し金一二万円を貸しつけた際譲渡担保物件として取得した家屋を同人に賃貸する形式によつて取得した収入であり、これは、原告が附随的業務によつて収得した収入(事業所得)である。

(三) 前記以外の収入金額は、原告が金融業を営むことによつて収得した利息、損害金等であり、昭和三〇年中において原告が法律上収得すべく権利の確定した金員であつて、現実の支払の有無には関係がない。

注1 佐藤小太郎関係

(1) 元金一三五、〇〇〇円に対する1/1―2/3 延三四日 日歩三〇銭の割合による損害金一三、七七〇円。

(2) 元金一二五、二七〇円(右元金一三五、〇〇〇円に対し2/3九、七三〇円内入の残)に対する2/4―2/5延二日日歩三〇銭の割合による損害金七五一円六二銭

(3) 元金一一二、五二一円(右元金一二五、二七〇円に対し2/5一二、七四八円三八銭内入の残)に対する2/6―12/31延三二九日 日歩三〇銭の割合による損害金一一一、〇五八円八三銭

(4) 右(1)―(3)の合計額一二五、五八〇円(円以下切捨て)

注2 石垣正太郎関係

(1) 元金二〇〇、〇〇〇円に対する4/8―7/7延三ケ月月六分の割合による利息三六、〇〇〇円。

(2) 同じく7/8―8/7延一ケ月月六分の割合による損害金一二、〇〇〇円

(3) 同じく8/8―8/21延一四日月六分の割合による損害金五、六〇〇円

(4) 延滞料 一、〇〇〇円。

(5) 右(1)―(4)の合計額五四、六〇〇円より切捨分二、〇〇〇円を控除した残額五二、六〇〇円。

注3 菅原耕三関係

(1) 元金一二〇、〇〇〇円に対する1/1―4/28延一一九日 日歩五銭の割合による利息七、一四〇円。

(2) 元金一二〇、〇〇〇円に対する4/29―11/21延二〇七日 日歩一〇銭の割合による損害金二四、八四〇円。

(3) 元金三〇、四八六円(右元金一二〇、〇〇〇円に対し11/21八九、五一四円内入の残)に対する11/22―12/31延四〇日日歩一〇銭の割合による損害金一、二二〇円

(4) 右(1)―(3)の合計額三三、二〇〇円

注4 猿沢栄一関係

(1) 元金四四、〇〇〇円に対する1/1―2/9延四〇日日歩一〇銭の割合による損害金一、七六〇円

(2) 元金二四、〇〇〇円(右元金四四、〇〇〇円に対し2/9二〇、〇〇〇円内入の残)に対する2/10―3/31延五〇日日歩一〇銭の割合による損害金一、二〇〇円

(3) 元金二一、二〇〇円(右元金二四、〇〇〇円に対し3/31二、八〇〇円内入の残)に対する4/1―4/30延三〇日日歩一〇銭の割合による損害金六三六円

(4) 元金一二、四七二円(右元金二一、二〇〇円に対し4/30八、七二八円内入の残)に対する5/1―5/30延三〇日日歩一〇銭の割合による損害金三七四円一六銭

(5) 元金七、八四六円一六銭(右元金一二、四七二円に対し5/30四、六二五円八四銭内入の残)に対する5/31―6/30延三一日日歩一〇銭の割合による損害金一五三円八四銭(計算は正確には二四三円二三銭となるが、貸借両当事者間の精算が一五三円八四銭となつているのでそれによつた)。

(6) 元金五、四〇〇円(右元金七、八四六円一六銭に対し6/30二、四四六円一六銭内入の残)に対する7/1―7/30延三〇日日歩一〇銭の割合による損害金二一六円(計算は正確には一六二円となるが、貸借両当事者間の精算が二一六円となつているのでそれによつた……7/30元金の残五、四〇〇円を完済)。

(7) 右(1)―(6)の合計額四、三四〇円

別紙二

〈省略〉

別紙三 別紙一に対する原告の認呈

〈省略〉

その余の記載事項は全部否認する。

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